「第八夜・吉祥寺の中心で古本と叫ぶために待つ」
吉祥寺は通っていた店が減ってしまい、足が遠のいていた。
健在な老舗の喫茶店「くぐつ草」と、移転オープンして2年足らずのカフェmoi [モイ]を目指して出かけた。
まず、東急百貨店の近くにあるカフェmoi [モイ]から。
ギャラリーもイベントもあるというお店。
フィンランドをイメージしたという店内はとにかく白い。
ギャラリーにはお洒落なハガキがズラリとならぶ。
奥のカフェは混んでいたが、カウンターに空きをみつけ、「あたたかいコーヒー」をいただく。
「ホット」ではなく「あたたかい」という表現が気に入ったのだが、でてきたコーヒーは大変おいしいのに少々ぬるい。残念だった。
550円を支払い、店主らしき男性に、マップの件をお願いする。
快諾をいただく。
次はアーケード街にある「くぐつ草」である。人形劇団が経営している。
5年以上来てなかったなと思いながら、変わっていない階段を下りる。
地下の店内は記憶よりも広く感じた。満席で、しばらく待つ。2、3分で席が空いた。
ゆり椅子の席でもよいかと聞かれた。いちばん手前の二人席は、ゆり椅子なのだ。
知らなかった。いつからなのだろう。
興味もあったのでOKして座ってみた。
一人だけゆらゆらしているのは先生にしかられそうで、ヘンな気分だった。
ブレンドには、ストロングとソフトがあった。これは変わっていない。
ソフトのほうを頼んだ。
14時前、名物のカレーを食す客がほとんどである。
私はよそで食事を済ませたので、カレーはまたの機会だ。
ひっきりなしに客がやってきて、行列がのびる。
店員さんは大忙しで、マップのお願いなどできる雰囲気ではない。
休日の吉祥寺、商店街も人の波だ。読みが甘かったか。
ひとまず店を出て、15時ごろ戻ってみることにする。
チラシは入り口のかごの中に、演劇関係のものが少しだけ置いてあった。
食器屋、本屋、雑貨屋、おでんだね屋とまわって、15時すぎ、くぐつ草へ戻る。
まだ混んでいるが、さっきコーヒーを運んでくれた店員さんをつかまえて、マップのお願いをした。
「基本的に劇団関係のものしか置かないのですが、少しなら」ということで、かごに入れさせていただいた。ありがたいことである。
くぐつ草も、荻窪のミニヨンと同じ頃に通いはじめた店だ。感慨もひとしおだった。
喧騒の吉祥寺を後にし、予定どおり阿佐ヶ谷へ向かう。
北口へ出て、まずラピュタ阿佐ヶ谷へ。
ポレポレ東中野、岩波ホールときて、阿佐ヶ谷にきたらラピュタだろう。
ここでも「映画を見ずに申し訳ありません」で始めた。
窓口の男性は、すぐに笑顔で受け取ってくださったが、ポスターは無理とのことであった。ポスターまでお願いするのも板についてきた。
近くのカフェ、inelle[イネル]へ向かう。お茶だけのつもりだったが、メニューを見たらサンボご飯がおいしそうなので、ハーブティーとともに早めの夕食にする。
4組で満席の店内。形はうなぎの寝床。白を基調にしたインテリア。
私の席は椅子が低い。幼稚園の椅子なのだ。座り心地は悪くない。
先客は二人。後から二人。繁盛している。
姉妹店の中野のカフェ同様、若い女性が切り盛りしている。
玄関扉が開け放してあり、一面の緑が目にもさわやかだ。向かいに公園でもあるのだろうか。
そのせいか、大変居心地がよい。
これまた、うなぎの寝床状に伸びるキッチンスペースの足元に、たくさんのチラシを発見。ミシマ社の特集が載った雑誌も発見した。
サンボご飯は無国籍風の味。サワークリームを初めから混ぜて食べれば、もっとおいしかったと後で気づいた。
サマンサという名前のお茶は、お店の雰囲気ともピッタリで涼やかだった。
パンのテイクアウトもしたので、1220円也。
マップのお願いをすると、「チラシがたくさんあると、お客様が喜ばれるんですよ。たぶんいいと思いますが、店長に確認します」とのことだった。
「あの本の著者が発起人なんです」と、店の奥でみつけた「チェコのマッチラベル」を引き合いに出してみた。アヤシクナイと言いたかったのである。著者は綾繁さんだが。
店を出ると、向かいは造園業のお宅だった。緑がいっぱいなわけである。
部数の多寡はあったが、予定どおりのお店に受け取っていただけた。誠にありがたい一日だったと家路についた。