しのばずくん便り

不忍ブックストリート一箱古本市について 随時 情報を発信します!

助っ人〈不忍マピヨン〉のMAP配りの日々(3)

「第三夜・代々木の中心で古本と叫んだら、美女が一人ふりむいた」


DADAというお洒落なカフェをネット検索でみつけた。


民家を改装した隠れ家的カフェ。代々木駅から徒歩2分という、都会のど真ん中にあるのが不思議なくらい、落ち着いた空間だという。
店名が気に入り、店のつくりに興味があり、ギャラリーもあるとのことなので、一箱古本市のマップを持参してみることにした。


ほんとうに代々木駅から歩いてすぐ。曲がり角の電柱に看板が出ているので、間違えることもなかった。
外観は、昭和の時代のありふれた木造民家。
よくぞこんなところに残っていますねと言いたくなった。


玄関をガラガラと開けて、みかん箱くらいの大きさの踏み石をのぼって、室内に入る。
土足でよいとのこと。すべて板張りで、縁側から小さな庭が見える。
襖や障子は取り外されている。裸電球のような灯りが陰影をつくる。


居間だったらしい部屋の、すみの席に座る。よくみたら床の間のスペースだった。


ピザのカレー風と迷ったが、タコライスと、苺の自家製ソーダを注文する。
このソーダがうまかった。しっかり苺の味がして、酸っぱいんだか甘いんだか、深い味わいでシュワシュワチカチカする。


客が次々にやってきて、満席になった。女性のグループとカップルが多い。
やたらカン高い声で話す、フリフリの服をきた女の子が、連れの男性に芸能界方面の話をしていて、空間とチグハグで面白かった。


キッチンのそばに棚があって、絵ハガキや本や雑貨を売っている。
コンセプトがしっかりしているのが、品揃えからもポップからも伺える。
古本市のマップを置いてもらえるか、五分五分だなと思う。


1700円の支払いを済ませ、デビュー当時の矢部美穂似の店員さんに、「お願いがあるのですが」と切り出す。
ほかの客の会計の合間に、店長に確認してくださったが、ギャラリーに展示するものしか置かないとのことだった。残念。


「お忙しいところありがとうございました」、とマップを袋にしまいかけると、「わたし個人的に見たいので一冊ください」と矢部美穂がおっしゃるではないか。
どうぞどうぞ、ありがとうございます、と浮かれた両手で差し出す。
アイドルのような風貌で古本市に興味があるとは、意外だった。いや、私に情けをかけてくれたのかもしれぬ。


置いてもらえるのもれうしいが、私にくださいと言われる方がうれしいかもしれないと思いながら家路についた。