しのばずくん便り

不忍ブックストリート一箱古本市について 随時 情報を発信します!

shinobazukun2007-04-20

岡倉天心記念公園のほど近く、瑞々しい葉を茂らせたうこん桜に寄り添われるようにして、アートスペース・ゲントは佇んでいます。飛び石を伝って室内へお邪魔すると、そこには開放感あふれる空間が。それを演出しているのは、高さ5メートルを誇る天井と、大きな採光窓。「他にはない個性的なスペースにしたかった」とおっしゃるご主人の政所利子さんにとって、ここ谷中は思い出の地なのだそうです。
北区梶原で生まれた政所さんは、幼少時代、ちょっとした遠足気分でよく谷中まで足を伸ばされたそう。「谷中の人たちは、家という閉じられた空間ではなく、街そのものに住んでいる感じがします。だから自然なつながりが生まれる。東京の大いなる田舎ですね」。
そう言って微笑む政所さんの本業は、まちづくりコンサルタント。理想となさっているのは、そこに住む人々が街に関わることを通して、コミュニケーションを深め、街に愛着を持てるような暮らしだとか。「その原点は、北区で見てきた風景にあります」と政所さん。登下校の道すがら、毎日のようにのぞいた町工場の風景が、今でも眼裏に焼きついているとおっしゃる政所さんは、北区出身であることに誇りを持ち、自ら「北の政所」と称していらっしゃるそうです。
そんな政所さんがこの地で「実験」をコンセプトに、多彩な分野の発表をなさっています。各地の産業や伝統工芸品を定期的に紹介し、舞踏と音楽と美術の融合など、他では挑戦したことのないような作品も紹介し続けていらっしゃいます。とはいえ大切になさるのは、肩に力の入った作品ではなく、日常の延長上にあるものとしてのアート。7月には「上野」という地にこだわり、大きな団扇や扇子に不忍池の蓮を描いた作品の展示をなさるそうで、現在その準備に追われていらっしゃいます。
「どんなことであれ、活動は常にING形で続けていかなくては」と力強くおっしゃる政所さん。まるで町工場の火のごとく、そのからだに静かな情熱の燃ゆるのが、目に見えるかのようでした。 (青秋部I&N)

*アートスペース・ゲントご主人の愛読書
『ないたあかおに』 浜田廣介(著) 池田龍雄(絵) 偕成社
「ひとりで生まれてひとりで死んでゆくさみしさのなかにも、期待感を感じさせてくれる。読むたびに、その時々の悩みに対する答えをくれる本です。」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

*アートスペース・ゲント
台東区谷中5−7−7