しのばずくん便り

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shinobazukun2007-10-10

日差しに照らされた木々の緑とブロック壁が、まあるい空気を織り成す三浦坂。そのてっぺんにある宗善寺は、浄土真宗大谷派のお寺です。創建の時期ははっきりとはわかりませんが、もともとは池之端にあったそうで、江戸時代の古地図にはすでにその名が刻まれています。
あまりにも立派な門構えに、足を踏み入れるのをためらってしまいますが、「散歩の途中にでも気軽に立ち寄ってください」とご住職の娘さんである山名さんは微笑みます。お言葉に甘えて境内へ歩を進めると、途端に視界が開け、墓地の向こうに根津や池之端を一望できます。緑に囲まれた東屋からその景色を眺めていると、坂をのぼってきた疲れもどこへやら。日の沈むまで飽かず眺めてしまいそうです。
そんな宗善寺は、時にネパール展の舞台に早変わり。かつて大学の授業中に、「ネパールに行きたい人」と問われて手を挙げたのがすべての始まりだったと山名さん。日本画を勉強していた山名さんは、スケッチでもしてこようという軽い気持ちで応募したはずだったのに、約1ヵ月の滞在中「楽しすぎて全然絵なんて描かなかった」とのこと。代わりにネパールダンスや曼荼羅を習ったり、小学校を訪問したりして、多くの人と知り合い、温かいものをたくさんもらって帰国したのだそうです。
今度はそれにお返しをしようと奮起。ともに旅した仲間と、学園祭でネパールダンスを踊るなどして募金を集め、再びネパールへ。現地に学校を建てるといった大仰な活動ではなく、「私たちらしく、もっと気軽に楽しくみんなに会いに行ける関係を築きたい」と考え、たとえ少しずつでも、より多くの子どもたちに届く支援活動を始めたのだそうです。
1999年以降、それが「ムスムス(笑顔)絵画コンテスト」というアートイベントとして結実。ネパールの小中学生に書いてもらった絵を宗善寺の壁に貼り出し、通りすがりの人による投票結果をもとに、美術の授業のない学校に絵の具を届けるなどして、子どもたちに笑顔を贈っています。
「ネパールの人は、みんな穏やかで優しい」とおっしゃる山名さん。現在は日本で暮らす旦那さんも、実はあちらで知り合ったネパールの方なのだとか。裸足で元気一杯に境内を駆けまわる息子さんに、遠くネパールの子どもたちの笑顔が重なって見えました。(青秋部I&N)

先頃、大塚にネパール料理のお店「デウラリ」をオープン(南大塚2−40−11 11時〜23時 年中無休)。ネパールカレーをはじめ、チーズナンやサモサ、モモ(カレー味の蒸し餃子)などのメニューが並びます。11月には白山にも2号店をオープン予定だそうです。


*宗善寺 山名さんの愛読書
『河童が覗いた……』シリーズ 妹尾河童著 新潮社
「絵が細かいので、ディテールまでよく伝わり、本当にそこへ行った気分になる。想像力が貧困な私にはぴったりの本です。」

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*宗善寺
台東区谷中1−7−31