しのばずくん便り

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いろはに木工所

いろはに木工所


「色々見たんだけど、ちょうどいいものがなくて……」。ここを訪れるお客さまの多くが、同じ言葉を口になさるそうです。そんな方のために、ぴったりのものをいちから手作りするのが、ご主人のお仕事。コンセプトは「あなたの町で暮らしのお手伝い」。肩肘張った特別なものではなく、日々の暮らしに溶けこむ普段使いの品々を作っていらっしゃるそうです。もちろんすべて木で作るので、傷や変色はつきもの。「それを長く使い続けることで、その人のものにしていってほしい」とご主人はおっしゃいます。
かつては住宅の設計に携わっていたというご主人は、仕事をするうち、自分の手でなにかを形にしたい、作りたいという思いが日増しに強くなっていくのを感じ、退職。職業訓練校を経て、ついには木工作家・井崎正治さんのもとに弟子入りなさってしまったそうです。そこで約6年間スタッフとして働き、「木を触って毎日を過ごせたらいいな」という漠とした思いを抱えて根津へ越してこられたご主人でしたが、それはやがて「この地で木工をやれたら」という願いへ。そうして2005年5月、いろはに木工所をオープンされたのだそうです。
もとは印刷所だったという物件を、ご自分の手で改修。店舗の奥に工房を設け、平日はほとんどそこにこもって作業をなさっているそうです。なかを覗かせていただくと、削りたての新鮮な木の香りが匂いたち、ここがまさしく「木工所」であるのだと、私たちに教えてくれます。
そんな工房で作られる品々は、木の素朴な柔らかさとともに、凛とした気品をまとっているように思います。それはきっと、世界にただひとつきりしかないものだから。ご主人は、ひとつひとつ手をかけてこつこつ作りあげる、という語感から、「いろはに」という店名をつけられたそうですが、ここに並ぶ木工品を見ていると、その真摯な仕事ぶりが目に浮かぶようです。
「いちから作るのでお時間はかかってしまいますが、こんなものできるかな、とどうぞお気軽に尋ねてください。縁側で世間話でもするような感覚でかまいませんから」と自作の濡れ縁を指し、ご主人はゆったりと微笑んでいらっしゃいました。 (青秋部I&N)

*くるみの木をけずる 匙、箸ワークショップ(各回定員10名)
匙づくり 4月30日(月)、5月4日(金) 10時〜12時 2000円(中学生以上)
箸づくり 5月5日(土)、5月6日(日)  10時〜12時 1800円


*いろはに木工所ご主人の愛読書
『あるきだした小さな木』テルマ・ボルクマン著 シルビー・セリグ絵 偕成社

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*いろはに木工所
台東区谷中2−15−13
営業日  土・日・祝 13時〜19時