しのばずくん便り

不忍ブックストリート一箱古本市について 随時 情報を発信します!

クラフト芳房  機織りの音が響く手工芸品屋さん

不忍通りの一角、一軒家が寄り添うように集っていた場所に立派なマンションが建てられたのは、今から20数年前のこと。それからの年月は、そのままクラフト芳房の歴史に重なります。もともとそこにあった普通のしもた屋にお住まいだったというご主人は、建て替えを期にお店をオープン。クラフトの名のとおり、陶器やガラス、木工などの手工芸品を並べるようになりました。
きっかけは、趣味で手描きの更紗を習い始めたことでした。ある日、先生自らが織りあげ、手描きした帯を締めているのを見て、今度は布を織るところから始めてみたいと一念発起。松本にいる先生の内弟子に入り、手織りの修行を積んだそうです。糸を選び、草木で染め、織りあげていく面白さにすっかりとりつかれ、いつしか着物を織るまでに。おかげで手描きからは遠ざかってしまったそうですが、あの日、先生が締めていた帯のような、完全オリジナルを作りたいという夢は叶いました。今はお店のなかに大きな機織りを置き、店番をしながらそこで制作に励んでいらっしゃいます。マフラーやショールなどのオーダーも可能。お好みの色、長さに織りあげてくれます。
そんなご主人がお店に並べるのは、クラフトフェアで知り合った、プロの作家さんたちの手になる作品。ときには、他にはないちょっと変わったものがほしくて、リクエストすることもあるそうです。とはいえ、大切にしているのは、日常生活ですぐに使えるものだということ。作家さんから直接買いつけるという強みを生かし、これなら自分でも買うだろうという低価格に抑えて、普段使いにぴったりのものを提供しているのです。
「自分も作り手なので、色々なクラフト作家さんとつながっていくのが楽しい」とおっしゃるご主人の一番の楽しみは、クラフトフェアで全国から集まってくる作家友達に会うことなのだとか。「自分の店を放っておいて、すぐあちこち遊びに行っちゃうの」と笑うご主人の人柄こそが、ひょっとするとクラフト芳房の看板なのかもしれません。(青秋部I&N)


*クラフト芳房ご主人の愛読書
あしながおじさんジーン・ウェブスター著 松本恵子訳 新潮文庫
「7人兄妹の末っ子で、いつもおさがりばかりだった私が、初めて自分だけのために買ってもらった本です。」


*クラフト芳房ご主人の探し物
『仕覆を愉しむ』柳順子著 小林庸浩写真 京都書院
ご主人が弟子入りしていた先生の著作で、もう絶版になっています。見つけた方はぜひ青秋部へご一報を。

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*クラフト芳房
文京区根津1-26-5-106
営業時間 11時〜19時
定休日  日・祝(GW中は5月6日まで休まず営業)